理事挨拶
映画業界の新しい一歩へ
島谷能成
2023年4月、製作から流通まで映画産業のすべての関係者が参画する自主的取組として、日本映画制作適正化認定制度がスタートしました。
このプロジェクトは、経済産業省による「映画制作現場の実態調査」を受け、日本の映画制作を将来にわたって持続的に発展させるためには映画制作現場の適正化が必要であるとの認識から、2019年、当時の映連(日本映画製作者連盟)岡田裕介会長の決断で始まったものです。
その後、私も映連会長として参加することになりましたが、当初は、まとめるのは大変難しいと感じていました。まず映画の製作者である映連、制作プロダクションの代表である日映協(日本映画製作者協会)、日本映画監督協会をはじめとする職能団体の集まりである映職連(日本映像職能連合)、この3つのカテゴリーを代表する3団体が、これまで一堂に会して話し合いを持つことはなかったからです。皆、映画作りのプロであり、1本の映画を完成させるという点では同じ方向を向いているものの、それぞれ利害が違う、考え方が違う、求めるものが違う。立場の違う3者の合意を得るのは容易ではありません。なおかつ、映連以外の製作者、日映協に参加していないプロダクション、映職連に所属していないスタッフもそれぞれたくさんいらっしゃるわけです。
それから4年、延べ3千人以上の方々が参加する200回以上の委員会や分科会、ヒアリングやアンケート調査を経て、制作現場の適正なルールをまとめたガイドラインを練り上げてきました。3団体、3者を中心に多くの関係者の意見を積み重ね、合意されたこのガイドラインによって、安全・安心して映画制作に集中できる状況が作られることはもちろん、日本映画を未来に向かって大きく発展させる契機になると考えています。
これからが本当のスタートです。いろいろな方々にご理解をいただきながら映適の事業を始動していきます。皆様には温かく見守っていただき、ご意見を賜りながら、自主独立、自立した映適になればと思っています。
日本映画の明日へ
新藤 次郎
映画は総合芸術です。自明ですがプロデューサー一人でも監督一人でも作れません。各パートのスタッフが全力で取り組まなければ完成しません。しかし、制作プロダクションはスタッフが足らないという現実に直面しており、このままでは数年後には映画を今のペースでは創れない危惧を持っていました。そうした中、2019年1月に経済産業省コンテンツ産業課・高木美香課長とお会いしたのは幸運でした。その年の夏にはフリースタッフのアンケート調査を実施していただき、映画制作適正化の議論の場を設置していただきました。映画製作を担う代表として映連(日本映画製作者連盟)、制作プロダクションを代表として日映協(日本映画製作者協会)、フリースタッフを代表して映職連(日本映像職能連合)、他にノンメンバーのスタッフ及び学識経験者で会議が始まり、それぞれの立場を超えてガイドラインに合意を得ることができました。映画制作現場のルールに合意したのです。この合意を実行する目的で3者間でのガイドラインを遵守する団体協約を締結し、そのことを審査・認定する映適(日本映画制作適正化機構)を発足する運びとなりました。
しかし、協約した3者に属さない製作者、制作プロダクション、フリースタッフが多数存在します。願わくは映画製作に係るすべての人々にご理解をいただき参加を望みます。
映適は3者で運営します。それは継続的に制度の見直しを含め議論のテーブルが残ることを意味します。綻びが出たら修正すれば良い。日本映画の明日の為に。
何よりもスタッフを守る取り組みに!
浜田 毅
この制度には、監督協会、撮影監督協会など8団体で構成されている日本映像職能連合(映職連)が賛同しました。また、これら職能団体に所属していないスタッフを含めた、すべての映画スタッフが賛同してくれていると思っています。そして、この制度はすべてのスタッフに必要な制度であると考えています。
「契約をする、させる、守らせる」という仕組みを整えることが、スタッフを守ることになります。同時に今回みんなで作ったガイドラインを映画界が守っていく、守らせていくことで業界全体がよりよくなっていくと確信しています。
映適は、セミナーやワークショップなどスタッフの人材育成のための取り組みも行う恒常的な機関になっていくと考えています。映職連もそのための協力は惜しみません。職能団体に参加していないスタッフも巻き込んだ、すばらしい組織にしていきたいと考えています。よい取り組みになると思います。